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ニュースなどで「セイバーメトリクス」という言葉を聞いたことはありませんか?
セイバーメトリクスは、メジャーリーグでは選手の年俸にも関わる評価の重要指標として定着しています。
日本でもメディアで扱われることが増え、ファンの間でもセイバーメトリクスが注目されています。
一見難しそうですが、今回は「セイバーメトリクス」についてわかりやすく解説していきます!
まずは簡単に、用語解説からです!
用語解説
- セイバーメトリクス (SABRmetrics)とは?
- 野球の様々なプレーを数値から客観的に分析したもの
セイバーメトリクス (SABRmetrics)は、1970年代に野球ライターのビル・ジェームズによって提唱されました。
野球の様々なプレーを数値から客観的に分析したものです。
当時ビル・ジェームズは野球史の研究家・野球統計の専門家でもありました。
バント店長
セイバーメトリクスは、野球のデータを統計学的に分析し戦略を立てるための分析手法です。
分析した客観的なデータに基づいて選手を評価することができます。
ここからは、攻撃面と守備面それぞれで特に何が重視されているのか?を見ていきましょう!
攻撃面
セイバーメトリクスにおいて、攻撃面では出塁率が重視されます。
なぜなら、出塁すれば(アウトを取られなければ)試合は終わらず、得点の機会が増加するからです。
そのため自らアウトを献上するバントは戦略的に効果的ではないとされ、日本でのセイバーメトリクスに対するネガティブイメージにも繋がっています。
これまで打者は打率・打点・本塁打の成績で評価されることがほとんどでした。
しかし、セイバーメトリクスでは出塁をしどれだけ先の塁へ進めるかが重視されます。
そのため、打率よりも長打率と出塁率を合算したOPS(On-base plus slugging)が重要な指標とされています。
OPSについてはコチラ!
近年ではMLBのトレンドに、wOBA(weighted On-Base Average)という概念も登場しています。
1打席当たりの打撃による得点貢献
{0.692×(四球−故意四球)+0.73×死球+0.966×失策出塁+0.865×単打+1.334×二塁打+1.725×三塁打+2.065×本塁打}÷(打数+四球−故意四球+死球+犠飛)
※各イベントの係数はシーズンごとに異なる
守備面
守備に関しては単純なエラー数や守備率だけで判断せず、守備範囲や併殺の成功率などを重視します。
野球は球場によって形状・サイズが違い、内野も土、天然芝、人工芝と様々です。
これらは補正をかけることで球場ごとの有利不利を取り除くように計算します。
MLBにおける野手の守備評価ではUZR(Ultimate Zone Rating)で評価されることが多いです。
UZRについてはコチラ!
セイバーメトリクスのメリット大きく分けると以下の2つです。
- 客観的に選手の評価ができる
- 監督からファンまで、数値や基準を知ることで幅広く誰でも理解することができる
セイバーメトリクスでは、人間の主観的な評価を出来る限り取り除くため、客観的なデータから判断することができます。
これまで監督、選手、記者やファンがそれぞれの考え方で評価していたものを、分析された数値を示すことで誰にでも理解できるようになりました。
例えば実績のある内野手のプレーは上手いと感じ、若手のプレーは粗削りだと感じることがあります。
実際のプレーを客観的に評価する場合に、セイバーメトリクスは効果を発揮します。
2003年に出版され、後に映画化もされたノンフィクション 『マネー・ボール』という作品があります。
セイバーメトリクスに基づく戦略で、年俸総額がMLBで最低クラスだったオークランド・アスレチックスが好成績を残す実話の物語です。
チームのゼネラルマネージャーだったビリー・ビーンは、実際にセイバーメトリクスを使ったチーム編成で2000年代に4度の地区優勝を果たす大成功を収めました。
当時アスレチックスは、資金力がないながらも徹底したデータ重視の選手起用と戦略を取ることで、2年連続100勝を達成する常勝球団となりました。
後にこの出来事が大きく影響し、最初は批判的だった他チームもデータ重視の野球へ転換しました。
バント店長
ここからは、セイバーメトリクスの代表的な指標を紹介します!
OPS(On-base Plus Slugging)
打者の能力を評価する指標のひとつ。
出塁率と長打率をあわせた数値。
UZR(Ultimate Zone Rating)
守備能力を評価する指標の一つ。
守備の上手さよりも、他の選手と比べてどれだけ失点を防いだかという観点に基づいて算出されている指標。
WAR(Wins Above Replacement)
どれだけチームの勝利に貢献できたかを表す指標のこと。
控え選手と比べ、どれだけチームの勝利をもたらしたかを示します。
ここでいう「控え選手」とは、新人などの経験が浅い平均以下の選手などを差します。
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
投手の安定感を測る指標。
「1投球回に、何人の走者を出したか」を表す数値です。
トレンドとなっているセイバーメトリクスですが欠点もあります。
ここからは、セイバーメトリクスを扱う上での問題点をご紹介していきます。
短期的な分析の精度が低い
セイバーメトリクスの指標は、主に長期的な統計データです。
例えば、UZRはプレーした量が多ければ多いほど絶対値が増えて有利になります。
出場試合数が少ない選手と、毎試合出場しているレギュラー選手を同等に比較しても適切な評価はできません。
UZRに関しては試合相当に換算する補正をかけたりもしますが、適切な評価とは言えません。
データ量を一定期間集計することで、精度が高くなります。
そのため長いレギュラーシーズンへの戦略としては有効ですが、ワンプレーで流れが変わる短期決戦などでは効果が弱くなります。
野球の魅力を損なう危険性
セイバーメトリクスでは、数値化できるものは何でも分析できます。
現在、代表的な指標は数十種類にも及び、中には独自の基準値を設けて数値化するものも多いです。
ある面では精密なデータが役立ちますが、データに捉われると本質を見逃す場合もあります。
また、一般的には理解が難しい指標も多く、そうした分析結果から練られた戦略はスポーツとしては魅力に欠けると言われる場合もあります。
MLBで2022年までは内野を何人で守ってもルール上問題ありませんでしたが、2023年シーズンからは禁止となりました。
これは統計データで打球が飛ぶ方向が分析されており、よりアウトを取れるポジションに選手を配置するため外野手を内野まで前進させるなどの意図がありました。
勝つためには有効な作戦でしたが、野球のポジションを無視したシフトはスポーツの魅力を損なうという指摘もありルール改正で極端なシフトが使えなくなりました。
データ至上主義と呼ばれて久しいですが、緻密な作戦が華やかさを損なう一面もあるようです。
全チームが同じトレンドを追ってしまう
戦略のトレンドは、対戦するほとんどのチームが採用しているため、似たようなチームを編成しがちです。
MLBのトレンドとして、現在最も浸透しているのが「フライボール革命」です。
理想的な角度で強くボールを打ち返すことで長打を狙い、ホームランを量産することで得点を狙う戦略です。
先頭から長距離打者を並べて、どこからでも得点が出来るオーダーを組みます。
打率よりも、長打と出塁が重視されるため、自然とOPSが優秀な打者ほど評価が高くなります。
打者のスイングもアッパースイングの選手が増え、以前より長打を狙う選手も増えました。
逆に盗塁はアウトになるリスクが敬遠され、近年重視されなくなっていました。
しかし、2023年シーズンより「ピッチクロック」の導入から、牽制球に球数制限が付いたことやベースの拡大で盗塁が狙いやすくなりました。
これによりMLB全体のトレンドが変わっていく可能性もあります。
今回は「セイバーメトリクス」について解説しました。
一般的に公表されている指標値は、見た目では判断が難しいものが多いです。
日本ではまだ浸透していないことも多く、比較的単純な指標であるOPSでも浸透しているとは言えないでしょう。
セイバーメトリクスの本場MLBでは、選手・メディア・ファンが日本よりも指標への理解度が高い傾向にあります。
今後は、日本でもセイバーメトリクスによる分析が一般化し、選手の評価や戦略の基礎となるでしょう!
この記事で「セイバーメトリクス」について理解して、野球をより一層楽しんでいただけたら幸いです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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